2011年5月18日水曜日

雪の練習生


内容を詳しくチェックせずにただ単にシロクマのお話ということで図書館から借りてきた「雪の練習生」という本。

著者の多和田葉子さんの作品は読んだことがありませんでした。

読み始めたところ、「ん?」、「サーカスのクマが引退して会議に出席している?」、「クマが自伝を書き始めた?」、「クマが亡命?」・・・「こりゃなんじゃ?」と頭がこんがらがってしまいました。



読み進むうちにシロクマの言葉を通して人間社会、サーカスや動物園の世界、人間と動物の「生きるということ」を描いていることがわかってきました。


ベア好きの間ではシロクマといえば「クヌート」か「ピース君」がまず思い起こされ、ベア作家なら一度はクヌートっぽいシロクマのぬいぐるみを作ったことがあるのではないかと思います。

それ程までに有名になったドイツの動物園の人気者「クヌート」と、サーカスで活躍したその母熊、さらにその母熊・・・三代のシロクマのお話です。

リアルな世界とフィクションの世界を行ったりきたり・・・
実に不思議な気分にさせてくれます。 着眼点も面白いし、物事の捉え方も鋭く、久々に言葉づかいの巧みな文章に出会いました。時に笑い、時にギックとし、皮肉に満ち、でも動物への愛情にあふれ、最後に泣けるお話です。

この本を図書館で予約した後、3月19日にクヌートの死を知りました。
震災のニュースの中で小さく報道されましたが、見逃すことはありませんでした。

本を読み終わった今、クヌートが死んだこの時期にこの本と出会うなんて何という偶然!と内心驚いています。(因みにこの本は今年の1月に発刊されたので、著者もこの時点でこんなに早くクヌートの死が訪れるとは思っていなかったことでしょう。)

読んだ後、クヌートの死因が脳の異常だったことを知りましたが、そう思って読み返すと又違った思いでこの本と向き合うことになりました。

私の中で動物に向き合う姿勢がちょっと変わった気がします。
家のワンコも私や人間社会をどんな思いで見ているのかしら・・・・ふと、そんなことを考えてしまいます。

多和田葉子さん・・・他の本も読んでみたくなりました。内容だけでなく、表現を楽しめる数少ない小説家に出会えた満足感が残りました。


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