2010年11月8日月曜日

「百万回生きたねこ」の作者 逝去



私が大切にしている本のトップにあげる、「百万回生きたねこ」の作者 佐野洋子さん(72)がなくなりました。ご冥福をお祈りいたします。





この絵本は77年に発表され、発行部数170万部を超えるロングセラーとのことですが、私がこの本に出会ったのは約10年ほど前のことでした。





絵が綺麗とか可愛いとかいうことではないのになんとなく惹かれて本屋で立ち読み。
読んでいるうちに涙が出てきました。今でも本棚から時々とりだしては読んでいます。


昨日の日経新聞の「春秋」欄によれば、佐野さんは随筆集の中で、この本を「1匹の猫が1匹の猫と巡りあい子供を産み死ぬというただそれだけの物語であり、絵本が売れたのは多くの人が、ただそれだけのことを素朴に望んでいるということなのかと思わされた」と述べておられたそうです。


100万年も しなない ねこが いました。
100万回も しんで、100万回も 生きたのです。
りっぱな とらねこでした。
100万人の 人が、そのねこを かわいがり、100万人の 人が、そのねこが しんだとき なきました。
ねこは、 1回も なきませんでした。


この文章で始まる物語。


王様の猫になったり、船乗りの猫になったり、サーカスの手品使いの猫、どろぼうの猫、おばあさんの猫、女の子の猫になったり・・・
でも猫は王様も海もサーカスも泥棒もおばあさんも子供も好きではなかった。飼い主は皆、猫の死を悲しんだのに・・・


あるとき猫は誰のものでもない「のらねこ」になりました。
猫ははじめて自分の猫になりました。猫は自分が大好きでした。


メス猫は皆、この猫のおよめさんになりたがりましたが、猫は「おれは100万回もいきたんだぜ、いまさらおっかしくて!」と無視しました。猫は誰よりも自分が好きでした。


しかし1匹だけこの猫を見向きもしない美しい白いメス猫がいました。 猫はこの美しい猫が気になり、「おれは100万回もしんだんだぜ」とかいろいろ自慢しますが、白猫は気にもとめません。 


猫はこの白猫に「そばにいてもいいかい。」とたずねると白猫は「ええ」と答えます。


猫はいつまでも白猫のそばにいたいとおもい、「おれは100万回も・・」とは二度といわなくなりました。子供もうまれました。
猫は自分よりも白猫と子供たちを好きになり、いつまでも白猫といっしょに生きていたいと思いました。


しかし、ある日、白猫が動かなくなり、猫は百万回もなき、そして白猫のそばで動かなくなり、二度と生まれ変わることはなかった・・・


このような物語。 ただそれだけ・・・なのに泣けました。


多分、それまで私自身、この猫のようだったからかもしれません。 


いとしいものに出会い、自分よりも他を愛することで初めて「生」を全うする・・・・それが生きるということ?


他を愛すること、簡単そうで難しい・・・そう思う人が多いからロングセラーになっているのでしょうか。 皆、「愛したい」と思っているのでしょう。 


この本を読んで涙したのは・・・・母を失ったときでした。 いかに大事な人を失ったかに気づいたときでした。


佐野さん、この本を残してくれてありがとうございました。


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4 件のコメント:

糸絵巻 さんのコメント...

そのねこ達は…

いま、日だまりで気持ち良さそうにしています…穏やかな空気に包まれて…。

そんな光景が浮かびました。

eleanor さんのコメント...

私もそう思います。

他を心から愛することができたとき、初めて心の安らぎを得ることができるのでしょうね。

「自分」に縛られているうちは、焦りや執念や嫉妬などから逃れられないのでしょうね。

匿名 さんのコメント...

ミルの親です。

いい話ですね〜。
elenorさんの説明を読んで、教えられました。

これはぜひ読んでみたいです。

eleanor さんのコメント...

ぜひ読んで感想を聞かせてくださいね。